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あれは「暴走」ではない

高校野球決勝。8回裏、佐賀北・副島の逆転満塁本塁打。見事でした。
きっと、高校野球史に残る一発として、これからも語り継がれていくでしょう。

それ以上に鮮烈なインパクトを与えてくれたのが、9回表、広陵の攻撃です。
無死一塁で、7番・岡田が送りバント。
投手が処理して、一塁ベースカバーに山なりの送球。
すると、すでに二塁に達していた走者の林が、その送球の緩さを見て、
すかさず三塁へと走り出す!
結果は、間一髪アウト。同点のチャンスは、一転して二死無走者となってしまいました。

結果からいえば、「暴走」です。
決勝戦の土壇場9回表、点差は1点。何よりも大事にしなくてはいけない同点走者。
とりあえずスコアリングポジションまで進んだのだから、
なにも欲張って三塁でアウトになるこたぁない。

でも、この場面からは、まったくネガティブな印象は受けませんでした。
むしろ「日本の野球は、ここまで進化したんだなぁ」という素直な感動を覚えたのです。

西武と巨人の日本シリーズで、クロマティの緩慢な打球処理のスキをついて
一塁走者の辻が長躯ホームインしたのが、ちょうど20年前のこと。
あれだって、結果がアウトであれば「暴走」ということになったはずで、
運良くセーフだったからこそ「球史に残る名走塁」となっているわけです。

だから、今回の広陵・林君の走塁だって紙一重。
もし判定がセーフで、その結果、広陵が再度同点に追いつくようなことがあれば、
これまた「球史に残る名走塁」になっていたはずなのです。

とにかく、「夏の全国大会決勝戦の9回」という野球人間にとっての極限状況で、
あんなアグレッシブな走塁ができる日本の高校野球のレベルを、
ワタシは掛け値なしに誇りに思いたいのです。
以下はあくまで仮説ですが、
この種のアグレッシブな意識は、イチローのメジャーでのプレイスタイルが、
日本中の野球小僧たちに知らず知らずのうちに刷り込んだものかもしれません。
(今の高3は、イチローがメジャー移籍したとき小6なんですね)
もっと具体的な例を出せば、WBCで川﨑ムネリンが見せた神業スライディング。
ああいう場面は野球小僧の潜在意識にしっかり刻み込まれるはずで、
そんなことも、今回の走塁にどこかで結びついている気がしてなりません。
(言うまでもないことですが、川崎もイチロー・チルドレンなわけで)

巨人戦の地上波での中継が減り、
スター選手が次々とメジャーへ移籍していく。
そんな現象だけをとらえて、
「野球って、盛り下がってるよね」などと言ってしまう“世間”に対して、
我々は断固として、その認識の誤りを主張していかなくてはなりません。
日本の野球レベルは、どんどんスゴイことになっているのです。
ダルビッシュを見よ。成瀬を見よ。涌井を見よ。マー君を見よ。
彼らが「高校野球」で投げていたのは、ほんの「つい最近」じゃないですか。

(大)

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2007年08月23日 01:41に投稿されたエントリーのページです。

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