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野球にお涙頂戴は要らない

映画のキャッチコピーに使われる「全米が泣いた」じゃないけれども、世の中何かと安易なヒューマニズムをちらつかせる手法が目に付く。
死を前提に進む物語(例えば余命わずかとか不治の病とか)や子供・動物が出てくる物語は無条件に見る側の思考を停止させる。ここしばらくそういう雰囲気の映画が何本も流行した。
死は全ての人が避けられない問題であり誰でも恐怖におののき共感を得てしまう。子供が活躍する物語は総じてほほえましくなり、動物が活躍するものはどんなに出来の悪い物語でも愛らしい仕草があれば無条件に心を許してしまう。
「死・子供・動物」という飛び道具は人の心をたやすく打ち抜く。
だからプロであるならば簡単に使ってはいけないはずだ。

4月9日の埼玉西武対千葉ロッテ戦、この日は西武と相性の良い大松尚逸の満塁弾あり、エンドランや相手の隙を突く好走塁など随所に大技小技を生かし好調西武相手に快勝した。マリサポなら爽快感たっぷりのゲームだったはずだ。
ヒーローインタビューは完投で今季初勝利の清水直行投手。奥さんを今年1月に亡くしているだけにテレビの前で少し嫌な予感がした。
案の定インタビューの中盤でインタビュワーは清水に「この勝利を誰に伝えたいですか?」と尋ねられる。
僕はアンタッチャブルな領域に手を掛けたインタビュワーの態度に憤慨と落胆が入り交じった感情を持ったが、当の清水投手は気丈に振る舞い「チームやファンのお陰です」とサラッとかわす。
しかしインタビュワーは食らいつく
「空の上で見守ってる人がいますが」
とまるで誘導尋問の様に亡くなった奥さんの事をなんとか口に出させようと必死の様子。

マスメディア的には、妻の死を乗り越えた清水直行の勝利をドラマチックな物語にしたいのだろう。しかし人の生死をこうも簡単に何万もの人の前で持ち出して良いのだろうか?
あそこで清水直行が涙ぐんだりすればメディア的には最高の絵なのかもしれない。しかし良心ある野球ファンならこんなインタビューを許してはいけない。
仮にあの場面で涙ぐんだりしたと仮定しよう。間違いなくテレビを沸かすだろう、紙面が大きく割かれるだろう、世の中大勢の野球を良くわからない人が「可哀想だったのね」と本心かどうかわからない事を口にするかもしれない。しかしそれは清水直行の本質をねじ曲げてしまう。
心ある野球ファンは清水直行の投球内容だけを論じよう。そのプレーを応援しよう。
何故なら清水直行は無粋な問いには答えなかったからだ。
プロ選手としてまた父親として気丈に振る舞い、安っぽいヒューマニズムに走らなかった清水直行を僕は応援したい。

元オリックスのパンチ佐藤以降、ヒーローインタビューで沸かせる選手が増えて来ている。
予告先発で岩本勉と発表されれば球場へ足を運んでは期待したし、最近では西武GG佐藤の「キモティ〜!」あれは球場で聞いてみたいと思う。
ファンサービスの一環もあるのだろうが選手のインタビュー応対力が年々向上しているのに対し、インタビュアーの質の低下が懸念される。
試合そのものは面白かったが、後味の悪さが残った。

(コマツ)

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2008年04月10日 18:21に投稿されたエントリーのページです。

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