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勝者なきゼロ年代

2009年の日本シリーズ終了。
ということは、「ゼロ年代のプロ野球」がこれで終了したということである。
この10年のシリーズの結果を、ざっと振り返ってみよう。(カッコ内は敗者)

2000 巨人(ダイエー)
2001 ヤクルト(近鉄)
2002 巨人(西武)
2003 ダイエー(阪神)
2004 西武(中日)
2005 ロッテ(阪神)
2006 日本ハム(中日)
2007 中日(日本ハム)
2008 西武(巨人)
2009 巨人(日本ハム)

巨人3勝、西武2勝、ヤクルト、中日、ダイエー、ロッテ、日本ハムが各1勝。
数字を見る限り、「ゼロ年代の王者は巨人」ということになる。
実際のところ、各ディケイドにおける巨人のシリーズ勝利回数をみると、
90年代が1勝、80年代が2勝(ちなみに70年代は4勝、60年代は7勝)だから、
ゼロ年代は「名門巨人軍復権」の時代として定義できるのかもしれない。

とはいえ、「ゼロ年代=巨人の時代」という実感は、限りなく薄い。
なぜなら、2000年、02年の巨人と09年の巨人にはほぼ連続性がないからである。
その間(堀内時代)には、どうしようもない沈滞期があった。
09年の巨人は、むしろ「2010年代へ向けた過渡期のチーム」とみるべきだろう。

リストを一瞥すれば分かるように、
ゼロ年代は、日本シリーズを「連覇」する球団がついに現れなかった。
これは、日本シリーズが始まった1950年代以来、初めてのことだ。
50年代には「西鉄の時代」があり、60年代はもちろん「巨人の時代」。
70年代には「阪急の時代」があって、80年代は「西武の時代」。
しかし、90~92年の西武を最後に、シリーズを「連覇」する球団は出ていない。
それでも、92~97年の6年で4回シリーズに出て3勝したヤクルトのようなチームが
90年代にはあったのだけれど、ゼロ年代にはそういうチームすらなかったのである。

なぜ、一つのチームが「王朝」を築けなくなったのか。
いうまでもなく、最大の理由は、
FA、ポスティング、他球団で活躍した外国人引き抜き、等による
国内/国外への選手移動が頻繁になったことだろう。
それによって、主に人材が流出する側のパ・リーグは
各球団の新陳代謝が物凄い速度で進み、空前の群雄割拠状態となった。
一方のセ・リーグは、巨・神・中の老舗3球団に人材が集中した結果、
「新陳代謝の乏しい高年俸球団」と「相手に名前負けする低年俸球団」との
格差が固定してダイナミズムが失われた。

他にも、一つの球団が「王朝」を築けない理由はいくつか考えられる。

「プレイオフ導入により、日本シリーズ出場権獲得の可能性が拡大した」
「データ分析の緻密化により、選手が継続して好成績を収めることが困難になった」
「アマチュアの指導レベルが全体的に向上したため、ドラフト段階での“人材格差”がかつてより縮まった」

いずれにしろ、この10年間は
かつてない速度で人材が流動化し、どの球団も安定した状態を作れなかった。
04年日本一の西武は、クリーンアップがフェルナンデス・カブレラ・和田で、エースが松坂。
08年日本一の西武は、クリーンアップが中島・中村・石井義で、エースが涌井。
一つのチームがたった4年でまるで違う顔触れに変貌していて、
それなのに、どちらも日本一になってしまう。
それがゼロ年代のプロ野球だったのだ。

原辰徳は、あちこちで「今年から5連覇する」と宣言している。
個人的には、そんな時代が来られたらたまったもんじゃないのだが、
おそらく、原自身はそれが時代に逆行する宣言であることを承知のうえで、
あえて口にしているんだろうと思う。
しかし実際問題、たとえば3年後の巨人がどうなっているかというと、
小笠原・ラミレス・亀井がクリーンアップで、エースがゴンザレスで、
抑えがクルーン……ってことは、まずないだろう。

5連覇は、とてつもなく困難な道だぞ。いや、3連覇、2連覇すらも。

(オースギ)

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2009年11月10日 00:42に投稿されたエントリーのページです。

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