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【再録】「野球は、正しい方向へ向かって進んでいる」

 以下は、2008年3月に、謎の野球ライター(笑)大杉カツオが、なぜか天下の『週刊ベースボール』に寄稿したコラムの再録です。本サイト「野球浴」の盟友であり、週ベ常連執筆者である野球文化評論家・スージー鈴木師匠の導きによって、伝統ある誌面の末席を汚す始末となったわけであります。
 では、なぜ今、この拙い一文を再録するのか。言うまでもなく、現在、讀賣を中心とするセ・リーグがとっている醜悪な態度に深く、深く絶望しているからである。
 お読みいただければわかるように、ワタシのプロ野球観は、大方(世間)のイメージとは違って「昔と比べたら本当によくなった」というものだ。文中には言及していないが、その分岐点は、2004年の球界再編騒動にあったと思う。あの荒波を潜り抜けたことで、パ・リーグが見違えるように再生した。それによって、古き悪しき(とあえて言う)「昭和のプロ野球」が後景に退き、よりよき「平成のプロ野球」が誕生しつつある。少なくとも、この時点ではそう確信していたのだった。
 どこの球団のファンであれ、現在進行形でまともに野球を見ている人なら、いまのNPBが「讀賣あってのプロ野球」などと思ってはいないはずだ。それが進歩というものである。しかし、東日本が大きく揺れ、その後に地中から出てきたものは何だったか。それは、忘れかけていた「昭和のプロ野球」の古き悪しき残骸にほかならなかった。讀賣がエゴを主張し、それにぶら下がるセ5球団が追随する。彼らはパ・リーグを蔑視し、野球ファンを蔑視し、世間を蔑視する。長嶋茂雄も王貞治ももういないのに。
 現状を見るにつけ、以下の一文でワタシが記したのは、束の間の、浅はかな、希望的見解に過ぎなかったということになる。しかし、本当にそれでいいのか。よくはないはずだ。「昭和の残骸」が何を主張しようとも、プロ野球は、そしてプロ野球ファンは、健全に進歩し、成熟しているはずだと思う。だとしたら、いま起こりつつある<暴挙>を許してはならない。仮にその<暴挙>が強行されるなら、何らかの態度表明をしなくてはならないだろう。
 以上、大瀧詠一師匠が自作リマスター版に寄せるライナーノーツばりの<長すぎる前置き>となってしまいましたが、お時間ある方は、一読くださいませ。(オースギ)


 プロ野球が好きだと自覚したのは、中日とロッテが日本シリーズを戦った年だから、1974年。今季で、ファン歴34年目ということになる。
 そんな世代だから、当然、「昭和のプロ野球」にはノスタルジーがある。デーゲームの日本シリーズ。神宮の外野芝生席。後楽園の「お帰りは地下鉄で」の看板。ベルトレスのユニフォーム。荒川博のべらんめぇ解説。日曜朝の『ミユキ野球教室』。選手の自宅住所がバッチリ書いてある名鑑。バックが静止画の『プロ野球ニュース』。ドラフト会議におけるパンチョ伊東の美声(例→クラウンライター、エガワスグル)。オフの余興番組でストライプの背広を着て演歌を熱唱するパンチパーマの選手たち……。

 で、ここからが本論。ノスタルジーとは、あくまでノスタルジーである。それ以上でも、それ以下でもない。あの頃は、今よりよかったのかどうか。それは、まったく別の話なのである。

 では、今の野球の状況は、どうなっているのか。アトランダムに挙げてみたい。
「巨人戦だけでなく、ほぼすべての公式戦を生中継で観られる」
「パ・リーグの球場が、普段の公式戦で満員になる」
「本拠地が首都圏と関西だけでなく、全国に分散する」
「セのチームとパのチームが、公式戦で対戦する」
「メジャーリーグで日本人選手が活躍する」
「プロ選手による野球版ワールドカップが開催されて、日本が優勝する」

 タイムスリップして、昭和の野球少年だった30年前の自分にこれらの事実を伝えたとしたら「ウソだろ!」と一蹴されるに違いない。どれもこれも、信じられない話ばかりだからだ。と同時に、当時の野球少年が「もしこんなふうになったらいいな」と心のどこかで思っていたことばかりでもある。
 つまり、今の野球界は、昭和の野球少年の「夢」が実現した世界なのである。「昔はよかった」というのは大間違いなのだ。

 もちろん、今の野球界にも様々な問題はある。あるけれども、少なくとも、我々世代が懐かしむ「昭和のプロ野球」よりは、確実によくなっている。何をもって「よくなっている」のかと問われたら、こう答えよう。「本当の野球好きにとって、よくなっている」のだと。

 本当の野球好きではない人々、すなわち、日常の中で野球の優先順位がそれほど高くない人々にとって、最近のプロ野球は沈滞しているように映るのかもしれない。スター選手は続々とアメリカへ行ってしまうし、巨人戦の地上波テレビ中継はどんどん減っているからだ。
 しかし、本当の野球好きにとって、そんなことは瑣末な問題にすぎない。日本人選手がメジャーで活躍するのは素直に誇らしいことだし、彼らのプレイを観戦する手段はいくらでもある。渡米した選手の穴埋めで若手が積極的に起用され、新陳代謝が促進されるという側面もある。そして、本当の野球好きは、地上波の野球中継なんてとっくに見限っている。

 だから、私が提言したいのは次のようなことである。野球を報じるメディア、および、現場の人々(選手含む)は「プロ野球が盛り下がっているから、なんとかしなくてはいけない」というような、ネガティブな物言いを一切やめてもらいたいのだ。
 野球は、正しい方向へ向かって進んでいる。そのことを「世間」に啓蒙するのが、野球人のやるべき行いだと思うのです。 (文中敬称略)

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コメント (3)

ゴールドクラブ:

お久しぶりに投稿します。
私の住む宮城県仙台市はご存じの通り地震で大きな被害を受けました。
私の自宅は仙台市南部にあり無事でした。プロパンガスと水道は当日から使え、電気は13日に復旧しました。(調整区域です)

地震による計画停電の影響で4月の日程が変更されたのを見た感想は、ヤクルトは巨人戦を静岡でやるのは意外でした。残りの試合を神宮で昼間何とか開催したいようですが、松山で試合した方がいいのでは?というのが率直な感想。
西武が大津で試合、とは滋賀の近江鉄道というバス会社は西武グループだからなぁ、と思いました。

この調子だとオールスター7月下旬から9月上旬はどうなるやら。関東でデーゲームは無理でしょう。東北・仙台だって去年は暑かった。
阪神は甲子園を高校野球に明け渡すから7球団のやりくりは大変ではないか。(九州電力も夏は計画停電の可能性とあるが、となると本当にマズイ)
60hzの東端の長野と静岡は代替試合多くなりそうだと思いました。
仙台も8月は暑いです。ただ4時半以降はいくらか和らぐので3時開始でもやってほしいというのが地元の声が少し。(それでも熱中症が心配なら倉敷かな?)
長野は西武系が強いので開催されそうですね。芝の管理上隣の松本でも試合がありそうです。
ロッテは北陸か鹿児島とみます。
巨人も主催は長野で試合したそうですが、宮崎で試合してやれよ、と思いました。(今年は宮崎での開催はセパ共にゼロ。キャンプであれだけ貢献しているのに…)
ヤクルトは松山、横浜は下関でしょうか。静岡も候補です。

オースギさんは7月下旬~9月上旬をどう予想しますか?
本日の夕刊フジの江尻編集委員の記事は考えさせられます。ヤクルトは松山、横浜は新潟へ移転という内容は。静岡は今年10月末から改修工事が始まり平成25年3月完成予定らしいので、新潟になったのかなぁ。

いつも長くなります。
プロ野球をほっとけないあまり…。


オースギ:

>ゴールドグラブさま

お見舞い申し上げます。被災地の方々にどんな言葉をかけるべきか、私たちにとって非常に難しいことなのですが、私が最も納得できたフレーズを記します。タレント・藤井隆がテレビで言っていた言葉です。
「頑張るのは私たちです。皆さんは元気でいてください」

夏以降のプロ野球がどうなるのかは、まだ不透明ですね。ただ、私の意見は一貫しています。「開催できる球場で、開催できる形態で臨機応変に開催すればよい」。プロ野球は試合を行い、収益をあげることが仕事であり責務です。その意識が最も大事なのであって、旧来のシステムに拘泥している場合ではありません。開幕騒動に関する私の不満(機構、選手会双方への)もその一点に尽きます。

4月29日のKスタ開幕戦が、無事開催されることを祈念しております。

ジェフリン:

本当にそうですね。健全になってきていると思います。
地上波の中継やスポーツニュースには辟易しますが、それしか見れないので、一度CSとか見てみたいなあといつも思います。

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2011年03月23日 01:15に投稿されたエントリーのページです。

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