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ファンサービスに試合の勝敗を介在させてはいけない

横浜DeNAベイスターズは、5月1日(火)から5月6日(日)の本拠地6連戦で実施する『Bibon Festa 2012 ~together & fun!!~』において、様々な企画チケットを発売します。“お客様の満足度”によってチケット代金が変動する『全額返金!?アツいぜ!チケット』は、プロ野球観戦では勝敗はもちろんのこと、試合そのものがお客様の心にアツいものを感じていただけるものだったかどうか、それをチケット代金に反映させる企画チケットです。お客様がアツくなった度合いによってチケット代金を自己申告いただき、横浜DeNAベイスターズが勝った場合はチケット代の半額まで、負けた場合はチケット代全額までを返金の上限として、その範囲内でキャッシュバックいたします。なお、チームの勝敗に連動しての価格変動ではございませんので、予めご了承ください。(横浜DeNAベイスターズHPより)

これを知ったときから、ずっとモヤモヤしていたのである。

「チームの勝敗に連動しての価格変動ではございません」とある。しかし、「チケット代金を自己申告」で「負けた場合はチケット代全額までを返金の上限」というのならば、実際はベイスターズが負けたらタダ見で結構と言っているのと一緒ではないのか。

ファンサービスは大切だ。それをおろそかにして、これからのプロスポーツは生き残っていけないだろう。大いにやっていただきたい。ただし、ファンサービスに試合の勝敗を介在させてはいけない。それは、踏み越えてはいけない一線ではないのか。

試合の勝ち負けはグラウンドにいる者の専権事項であり、原辰徳風の大仰な言葉を使うなら「聖域」である。コミッショナーだろうがナベツネだろうが誰だろうが、ユニフォームを着ていない者が試合の勝ち負けに介在することはできない。その原則を踏み越えたときに何が起こるかは、過去の忌まわしい歴史が教えてくれる。「嘘だと言ってよ、ジョー」のブラックソックス事件であり、西鉄ライオンズを壊滅に追い込んだ黒い霧事件である。大げさなことを書いていると思われるかもしれないが、試合の勝ち負けが見る者の経済にダイレクトに影響する、という意味では同じだと考えるべきだ。それを同じと考えられない鈍感さがモラルハザードを招き、やがて取り返しのつかない災厄をもたらすことになる。

チケットの変動価格という「ファンサービス」自体は、メジャーでもよく見られることだ。ただしそれは、その日のウォール街の株価に連動したものであるとか、あるいは、季節や曜日や対戦相手に応じて価格を変えていくというものであって、「試合の勝ち負け」を対象にするものなどないと思う。いくらメジャーの商魂がたくましくても、そういうことはやってはいけない、という最低限のモラルがそこにある。ひるがえって、DeNAのフロントには、最低限のモラルが欠如しているというしかない。言い方を変えるなら、この業界に参入したばかりの彼らには、プロ野球という興行に対する畏れが足りない

チームが勝とうが負けようが、同じようにあなた方を楽しませますよ。それがファンサービスというものではないのだろうか。

(オースギ)

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2012年04月19日 02:15に投稿されたエントリーのページです。

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