« 南半球のショップで感じたベースボール | メイン | 3のつく数字と3の倍数だけアホになる巨人 »

古典・野球落語『三枚新庄』

ようこそのお運びで、厚く御礼申し上げます。徒然亭スー草と申します。さて、久々の野球落語、今回は「三枚起請」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%9E%9A%E8%B5%B7%E8%AB%8B)の改作で『三枚新庄』。

『三枚新庄』

建具屋の半七が吉原遊郭に行ったっきり戻らないと聞き、棟梁の政五郎が意見をしてやろうと半七を呼びつける。

「お前の親父に聞いたぞ。お前、吉原遊郭の花魁に入れ込んで、何日も家に帰っていないんだって?」

「ウへヘヘへ、当たり…」

話を聞くと、『年季が明けたらきっといっしょになる、神に誓って心変わりしない』という起請文も取ってあるらしい。

「何々…『一つ、起請文のこと。私こと、来年三月年季があけ候えば、あなたさまと夫婦になること実証也。新吉原江戸町二丁目水都楼内、喜瀬川こと本名新庄剛乃』。これをもらったのか!?」

「エヘヘヘへ、どうでしょ?」

「馬鹿か、お前は…」

「あ!? 投げた!! 俺の大事な…」

「あんなもの大事にするなよ」

なんと、棟梁も同じ女から、まったく同じ内容の起請文をもらっているのだ。

二人して呆れているところへ、今度は三河屋の若だんな(新之助)がやってきて、そっくり同じようなノロケを言いだした。

「あたしにその水都楼の女がぞっこんでしてね、これここに起請文まで…」

「『あなたさまと夫婦になること実証也。喜瀬川こと本名新庄剛乃』…」

「何で知ってるの!?」

棟梁に事情を聞き、新之助と半七の怒ること怒らないこと…。

『これから水都楼に乗り込んで、化けの皮をひんむいてやる!!』と息巻くふたりに、棟梁がマァマァと声を掛ける。

「相手は女郎だ。下手にねじ込んでも、開き直られればこっちが野暮天にされるのがオチだぜ。それならば…な」

なにやら二人に作戦を授け、三人そろって吉原へ。

お茶屋の女将に話を通し、部屋を借りた棟梁は、半七と新之助を部屋に隠して喜瀬川を御茶屋に呼びつけた。

「起請文? 棟梁にしか差し上げていませんよ。他の人には…」

「建具屋の半七には?」

「半七? どちらの…知ってますわよ、そんなに睨まないで。確かにお知り合いではありますけど、起請を送った事は在りませんわ。あんな『水瓶に落ちたおマンマ粒』みたいに太った…」

「『水瓶に落ちたおマンマ粒』、出といで…」

納戸の中から半七が登場。

「アララ、いらっしゃったの…?」

「こいつだけじゃねぇだろ。三河屋の新之助にも…」

「知らないよ。あんな『日陰の桃の木』みたいな奴…」

「『日陰の桃の木』、こちらにご出張願います」

「嘘…!?」

言い逃れできなくなった喜瀬川だが、このまま引き下がっては…花魁の名が廃る。

「ふん! 大の男が三人も寄って、こんな事しか出来ないのかい。はばかりながら、女郎は客をだますのが商売さ。騙される方が馬鹿なんだよ」

「何だとこの野郎!!」

「アララ、新ちゃん。手なんか上げちゃって如何するの? 吉原で女に手を上げるのはご法度よ」

「そんなんじゃねぇや」

「じゃあ、その手は何?」

「ん…これは『グー』だ。グーを出して…花魁の手管にはグーの音も出ない」

段々旗色が悪くなってきた。仕方なく棟梁が仲裁に入る。

「喜瀬川。男をだますのが仕事だって言うのは理解できるが、何で起請文なんかでだますんだ? 女郎なら、ちゃんと口で騙せよ」

「フン!! 一枚や二枚で驚くなってんだ。この江戸中探したら、いったい何枚起請が出てくることやら…」

「喜瀬川、昔からよく言うだろ? 『起請に嘘を書くと、熊野の烏が三羽死ぬ』ってな」

「オホホ…。私はね、言い寄ってくる男なんざ相手にしねぇんだよ。」

「じゃ、本当に好きになるのはどんな男なんだ?」

「敬遠されると打ちたくなる」

(完)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.yakyu-yoku.com/hot/mt-tb.cgi/124

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2008年05月26日 14:32に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「南半球のショップで感じたベースボール」です。

次の投稿は「3のつく数字と3の倍数だけアホになる巨人」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。