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【開幕前夜】あえていま、セ・リーグ論

いまに始まった話ではないが、セ・リーグは殿様商売である。

理由は簡単で、巨人・阪神・中日という「三大老舗球団」がデンとあるからだ。
それぞれ戦前のプロ野球草創期から、東京・関西・中京という日本の三大都市圏を根城に、
身売りも本拠地移転もなく継続してきた揺ぎない伝統がある。
戦後の2リーグ分立の際、<新聞社連合>である中日は巨人に早々と追随した。
そして、<私鉄連合>として阪急や南海とともにパ・リーグに加わるはずだった阪神は、
讀賣の説得によって土壇場で寝返り、セ・リーグに加盟した。
歴史的経緯をみればこの3球団は一蓮托生なのであり、
彼らがアピールする「お互いのライバル意識」というのは、
興行が終われば一緒のバスで移動するような、
同一プロレス団体の中で繰り広げられる「抗争」と大差はない。

この3球団に、戦後の新興球団である(現在の)ヤクルト・横浜・広島がぶら下がるという構図で、
セ・リーグは推移してきた。
たとえば巨人のV9時代(1965~73)、2位は常に阪神か中日だった(阪神5回、中日4回)。
この9年間で「新興球団」がAクラスに入ったのは、
大洋(当時)が3回、広島が1回、それぞれ3位になっただけである。
こういう時代を「プロ野球の黄金期」と語る(主に団塊世代の)人たちを、
ワタシはあまり信用していない。

個人史を述べさせてもらえれば、
長嶋茂雄引退の74年に「自分はプロ野球好きなのだ」と目覚めたワタシは、
いわば<ポストV9世代>なのだと思う。
75年に広島が初優勝し、78年にヤクルトが初優勝した。
つまり、セ・リーグの歴史が変わった時代だった。
一方のパは、「強い阪急」がずっと優勝していて、日本シリーズでもセを圧倒していた。
(76、77年の巨人も、阪急の前では「格下」だった。そういう時代があったのです)
下克上のセと、保守的なパ。それが、個人的な「プロ野球の原風景」だったわけです。

……その後、プロ野球は幾多の紆余曲折を経た。そして、2010年。
かつて保守的だったパ・リーグは、球界再編騒動などの苦難を乗り越えて、
いまや理想的な「群雄割拠」状態となっている。
6球団がフラットな状態で競い合い、どこが覇権を手にしてもおかしくない。
じゃあ、セ・リーグはどうなのか。
驚くべきことに、あの「巨人のV9時代」に逆戻りしているではないか。
01年のヤクルト以降、優勝は巨人・阪神・中日3球団のタライ回しだ。
07年から導入したクライマックス・シリーズも、ほぼこの3球団の指定席である(昨年は奇跡的にヤクルトが3位になったが、あれは阪神が勝手にコケた結果だ。勝率5割以下の3位なんて、正直にいえば3位には値しない)。
そして今季の順位予想も、Aクラスは「巨人、阪神、中日」のオンパレードである。

「巨人のV9時代」に大洋やサンケイや広島のファンだった人たちは、
もしかするとこんな心境だったのかな、と考えることがある。
「弱い球団は企業努力をしてないからだ」という小泉新自由主義的な物言いには与したくないが、
あえていえば、こんな構造を招いた責任は「下の3つ」にあると思う。

「上の3つ」=巨人・阪神・中日に「変われ」といったって無理だろう。
彼らはそれぞれの既得権益をベースに「うまくやっている」のだから、変わる理由がない。
変わるべきなのは「下の3つ」だ。でなければ、セ・リーグに未来はない。

広島は昨年、新球場移転という大きなエポックで「変わる」道筋を示している。
残るは、ヤクルトと横浜だ。さまざまな意味で、12球団の中で最も埋没している2球団である。
ハッキリ言おう。どちらかの球団に、今後2年以内に「本拠地移転」を決断してもらいたい。
さしあたり、それ以外に「変わる」手段はないだろう。
それが決して無謀な手段でないことは、いまのパを見ていれば分かることだ。
これを、無責任な発言だとは思わないでほしい。
東京在住のスワローズファンが、ホームゲームを観戦できなくなるリスクを承知の上で
行っている<提言>と受け止めてもらいたい。

仮にスワローズが松山へ移転しても、ワタシはスワローズファンをやめるつもりは微塵もない。
むしろ、松山という土地を好きになるように努力するつもりだ。

(オースギ)

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コメント (2)

ゴールドクラブ:

スージー鈴木さんの掲示板に書き込みをしている者です
スージーさんの紹介でここへ来ました。初コメントです。

スワローズの四国移転案ですが、ここへ来て凄い記事を見ました。

それは9月1日発売の週刊ベースボール誌上にある綱島理友さんの記事でした。

湘南シーレックスが消滅に絡んだ記事ですが、なんと横浜ベイスターズに移転を勧めているのです。

理由は横浜スタジアムの売上が球団に入らないため球団強化につながらない、というものです。

氏は移転先として親会社のTBSをあげて北関東の都市をあげています。(3万人収容の球場だと宇都宮しかありませんが。)

横浜市在住でベイスターズファンの綱島氏が唱えた説だけにこの意味は重いです。

でもそれなら、本命松山・対抗新潟・大穴静岡、で移転という発想はどうなんでしょうか。

オースギ:

>ゴールドグラブさま

はじめまして。コメントありがとうございます。

ハマスタのことは、移転時から続いてきた構造的問題かと思います。確か球場運営会社は元々西武系資本。そもそもは堤義明が大洋を買収するつもりでハマスタ建設にコミットしたのだけれど、いろんな事情で買収を断念し、ライオンズにターゲットを変えた経緯があったと記憶してます。

個人的意見ですが、ベイの場合、TBSが親会社のままの状態で本拠地移転を模索することに無理があると思います。本拠地移転の前に「親会社移転」が先決では。

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2010年03月26日 01:01に投稿されたエントリーのページです。

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